生殖過程におけるペルオキシソーム機能とは?

 シロイヌナズナのapem変異体を解析していく中で、いくつかのapem変異体が、生殖過程にも影響を出すことが分かってきました。その結果、それらの変異体では、種子形成が抑制されます (図7)。これまでのペルオキシソーム研究は、葉や根といった栄養組織での解析が中心に行われてきており、生殖組織における知見は少ないという状況でした。apem変異体の示す表現型は、生殖組織においてもペルオキシソームの機能が必要であることを示唆しており、apem変異体を用いることで、生殖過程におけるペルオキシソーム機能の制御機構を明らかにできるものと考えています。現在、花粉や卵細胞、精細胞のペルオキシソームを可視化させ (図8)、その機能や形成機構の研究を進めています。



図 7. apem変異体の表現型

apem2apem4変異体は、どちらもPEXと呼ばれるペルオキシソーム形成因子の変異体である。この写真は、ヘテロ接合体を自家受粉させた後のさやの様子を示している。コントロールの親株と異なり、変異体では、矢印で示したような異常な種子が観察される。

 

図 8.花粉におけるペルオキシソーム

Lat52遺伝子由来のプロモーターの下流にGFP-PTS1をつなげた融合遺伝子をシロイヌナズナに導入すると、根や葉と同様に花粉のペルオキシソームが粒状の構造として観察される (GFP-PTS1)。次に、この形質転換体とapem変異体と掛け合わせ、apem変異を導入すると花粉においても体細胞で観察された変異体の表現型が観察される。ここで示すapem2の場合ではペルオキシソームのタンパク質輸送が抑制されるので、GFPの蛍光がサイトソルで検出される。

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